曲がり角の向こう

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD) 公共政策大学院の日々

最後に

一旦このブログを今日をもって終了としたいと思います。アメリカへの大学院を目指す方にとって、少しでも何か助けになっていれば幸いです。

今年の11月はアメリカの大統領選挙ですね。私は4年前の2016年11月8日に、トランプが次期アメリカの大統領に選出された時に、NGO職員としてスリランカで働いていました。ちょうどその日は団体のCEOが出張に来ていたタイミングだったこともあり、よくその日のことを覚えています。アメリカの地図の中央部が少しずつ赤に染まっていくのを、スリランカの現地スタッフと、まさか、、、という思いで見守っていました。正直、トランプに決まった時点で留学先をカナダに変えようかと、一瞬頭をよぎりました。その日のディナーで、CEOと一緒に出張に同行していたNPOのファンドレイジングを専門とする方から、留学の話をすると「アメリカに行った方が良いですよ。大統領が誰でも大学院で学ぶことに変わりませんから。僕はアメリカの大学院に行って心から良かったって思うんです。勉強は大変だけど、頑張る人には本当に優しい国ですから」と言ってもらえたことが私の背中を押してくれて、翌年の夏にUCSDの扉を叩きました。

今はコロナの影響もあって、わざわざアメリカにまで留学をするのはリスクが伴うことですし、アメリカの高額な医療と脆弱な医療保険の事情を知っているので、正直心からお勧めできません。それでも、もしアメリカの大学院留学を将来実現したいと思うのであれば、是非あきらめずに準備をしてほしいなと思います。準備さえしておけば、最高のタイミングで最適の場所への道が出来ていると思います。

今までブログを読んでいただき、ありがとうございました。

聞きたいことありますか?

皆さん、こんにちは。ゆるくこのブログを続けていますが、何かアメリカ大学院の留学や世銀奨学金、サステナビリティに関する仕事で聞きたいことがあればコメントを残してください。何か質問があれば、回答させて頂くようにしたいと思います:)

UCSDで経験したDiversity

先週鎌倉の由比ガ浜にある、鎌倉文学館へ行ったのですが、出口付近に特集されていた作家井上ひさしさんの言葉が印象的でした。井上さんは、私は平和について語るときに出来るだけ「平和」という言葉を使わずに「日常」と言うようにしています。なぜなら平和と言う言葉があまりに使い慣れすぎていて、本来意味するものが失われている気がするからです、ということを仰っていて、なるほどなと思いました。

これは、今アメリカから世界中に広まっている人種差別についても同じことが言える気がします。人種差別、と言った瞬間に、何だか分かった気になってしまって、言葉の持つ広がりや深さを考え続けることを簡単にやめてしまっている気がします。私自身は、大学時代ピースボートに乗ったし、卒業後もスリランカで働いたりと、それなりに国際経験を積んで来たつもりでいましたが、やはり日本で日本人としてぬくぬくと生きてきて、まだまだ知らないことばかりだと思うことがアメリカでは多かったです。今回は、UCSDで経験したダイバーシティについて、少し書きたいと思います。

・パスポートの持つ力

私の大学院では、およそ20か国ほどの国籍のクラスメートがいましたが、とても良くしてくれたイラン出身のクラスメートがいました。彼はイランの大学を卒業後にハワイ大学でも修士号を取り、その後UCSDで2つ目の修士号を取得しに来ていたのですが、非常に優秀で早くからリサーチ・アシスタントのポジションを得ていました。私の大学院からは毎年COP25などの国連環境会議に大学を代表して数名出席するのですが、私はてっきり彼がメンバーとして参加したのかと思っていたら、「行かなかったよ。僕はイランのパスポートだから、一端アメリカの外に出てしまうと、最悪入国できないケースがあるからね。リスクを避けたんだ」と淡々と話してくれたのをよく覚えています。私は今まで自分のパスポートがそんな風に、ある国で入国拒否されるかもしれない、という心配をしたことがありません。ロシア出身の友達も同じように話していて、結局2年間の中でほとんど旅行らしきことをしなかったと言っているのを聞くと、身が引き締まる思いでした。

・LGBTQの人たち

西海岸がオープンな社会だから、ということもあると思いますが、大学院の教授室のトイレは男女共用だし、大学院の公認サークルにLGBTQをサポートするクラブがあったり、冬学期が終わったら男子学生が性転換をして女子学生になっていた、など今まで経験したことのない出来事にビックリすることも多々ありました。でも、自分のパートナーが同じ性別であろうとオープンに交際できる環境は、とても良いなぁと思いました。私の日本人の友達にも何人かバイセクシャルの友達がいますが、パートナーとの関係を周りに知らせるのにとても苦労しているのを知っているので、もっと性別や見た目がどうよりも、その人個人をフェアに評価できる社会が育つと良いなぁと思います。

・Diversityに価値を置く大学

私が在籍したころは、大統領令によって中東やアフリカの人々の入国制限を行ったり、中南米からの移民を排斥する等、Diversityの尊重とは逆行する社会の流れが出来つつありました。UCSDにも、そういった国から留学したり、家族と共に移民として定住している学生がいたのですが、必ずそういった大統領令が出ると、即日にはUniversity of California (UC) から全生徒宛に、大学として学生の居場所を確保する努力をする、とか一人一人の声が重要、多様性の尊重は今後も変わらないという、強いメッセージが送られてきました。そのメッセージを受け取った一人として、私は大学というコミュニティが、居心地の良いものとしてあり続けることへの希望を持つことができ、またUCの強いリーダーシップを誇りに思ったものです。

 

最後に、私が初めてNYへ行ったときに行った9.11のメモリアルミュージアムの言葉をもって締めくくりたいと思います。このメモリアルミュージアムはあくまでも、アメリカ人から見た9.11というイベントを描いていて、じゃあその時のアフガニスタンの一般人はどうだったの?という視点が欠けていると感じましたが、一見の価値のあるミュージアムです。そして壁面に、”We came in as individuals. And we will walk out togethr" という一人のアメリカ人の言葉がありました。この言葉を見たときに、私は何のつても知り合いもいないままに一人でアメリカの大学院に来たけれど、約2年間経って、同志と呼べる友達を見つけて、それぞれの未来を歩んでいくんだなぁと感慨深く眺めたものでした。そして、上に述べたような色んなバックグラウンドを持った友達たちと過ごした時間の中で、私自身のDiversityという言葉も少しづつ育った気がします。

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9.11メモリアル美術館にあるメッセージ

 

 

アメリカは夢を追いかける場所

皆さんこんにちは。相変わらずのコロナな日々ですが、さっき昼ご飯を食べながら見た昨晩のアナザースカイがとても良くって、私の知っている良きアメリカを思い出させてくれたので今ブログを書いています。

ギタリストのMIYAVIさんが「LAは夢を追いかける場所、挑戦しても良いんだと思える場所」と答えていて、私もとても共感します。アメリカは実力社会ではある一方で、頑張る人には優しい国だと思います。「優しい」というのは、評価が甘くなるという意味ではなくて、助けてくれる人が自然に現れたり、こういう人が知り合いにいるから紹介するよ!という文化がある。人を助けるのは日本でも同じだと思いますが、よりスピーディーに、そして関係が浅くとも起こったりした気がします。

振り返ってみると、私がアメリカへの留学の憧れを初めて抱いたのは、当時立教大学の3年生で全員必須のキャリアセミナーという名目で卒業生の仕事の話を聞いた時だったと思います。司法書士、テレビ局勤務、大手メーカー勤務など幅広い卒業生が集まっていたのですが、私は当時その方たちが話した仕事の内容は全く覚えていません(笑)。でも、コカ・コーラで働かれている方のMBA留学の所は結構鮮明に覚えていて、アメリカの何が良かったかって、ファミリー・レストランで働いている女の子も絶対に女優になると言って夢に向かっていて、その姿勢にすごく影響を受けたということを話されていて、それってなんだか素敵!と思ったりしたものです。そんな場所にいつか行ってみたいとも思いました。

そしてその感覚は間違っていなかったと、それから約10年ほど経った今思います。単純に西海岸に住んでみたいからという理由でサンディエゴを選び、思ったほどビーチライフは全然堪能出来なかったけれど、でも本当に皆必死に勉強して、ささやかなホームパーティを開いて、笑って、励ましあって、必死に夢を追いかけた2年間でした。今は残念ながら、コロナの感染で違う場所になってしまった気がしますが、それでもアメリカは、私にとっても夢を追いかける場所だったと思います。

だから、もしこのブログを読んでいて、アメリカの大学院留学を目指している方がいれば、是非その夢を諦めてほしくないなと思います。アメリカは、思いを持って努力している人には、本当に寛大な国ですから。

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サンディエゴの海辺をドライブするとこんな景色

 

コロナな日々

みなさん、こんばんは。コロナウイルス感染が東京でも拡大し、本当に不安な日々を送っている人が多いと思います。私も、いつまでこの状況が続くのか、精神的に落ち込むことがあります。私の会社は2月中旬から在宅勤務を開始しているので、早2カ月が経つ頃ですが、仕事以外の会話を誰ともしないで終わる日も多く、なんて非社交的な毎日!と嘆かわしくもなります。そんな日々ではありますが、出来るだけ気持ちをフラットに保つように考えて実践することが大事かと思い、私なりに大事だなと思うことを書きたいと思います。

1.不安な気持ちを肯定してみる

まず、今回のコロナウイルス感染は世界的に見ても「未だかつてない」ものであって、誰しもが不安になることは当たり前なのだと思います。だから、一体どうなるんだろうと思うこと、それが自然だと思って受け入れてみる、そうすることで少し気持ちが落ち着くように思います。

2.ユーモアを忘れない

アメリカに留学していた時に、アメリカ人のクラスメイトが〇〇教授のユーモアセンスは最低だ、と話していたことがあって、とても新鮮でした。私の今の勤務先でも、サンフランシスコから今週のオモシロ画像などがたまに送られてきたりするものです。危機的な状況になると、どうしても体に力が入ってしまい視野も狭くなりがち。そんなときにこそ周りの面白いジョークに救われることがあります。それと同じくして、笑うことも大事。だから、自分が笑える映画、ドラマを見ることをお勧めします。

3.コロナ感染が落ち着いたらしたいことを書き出してみる

私は、気持ちが煮詰まってくると近場でも少し遠くでもふらっと旅に出かけて気分転換するのが好きなのでこの移動の制限というのが本当に堪えます。なので、今はこれが落ち着いたらここに出かけよう、とか、こういうことを始めようとか、色々と妄想を膨らませています。書き出しているうちに何となく気持ちが前向きになってきます。

その他は、部屋に緑を取り入れたり、花を飾ってみる。ヨガや自力整体をして体のメンテナンスをする、この際に免疫力アップのレシピを研究して作ってみる、などでしょうか?本当に一日でも早く平穏な日々が訪れることを願うばかりです。写真は去年の今頃に訪れたワシントンDCで見たソメイヨシノです。本当に美しかったです。

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去年ワシントンDCで見た桜

 

アメリカと日本の企業文化の考察

みなさん、こんばんは。昨日、今日ととても寒い1日になりました。さて、今日は私が働いている米系の組織で働いて日系の企業との違いを少し書きたいと思います。

私は新卒で入った大手家電メーカーで商品企画の仕事をしましたが、よく上司や先輩に聞かれたのは「考え方を聞かせてくれ」ということでした。いかに結論への考えるプロセスが合理的で客観的かが試され、もしそのプロセスが説得に不十分であった場合には、即やり直しを言い渡されました。このエクササイズは確かに新人には重要なプロセスの一つなのですが、課長レベルでも同じように言われ、あまりにも多くの時間がそのプロセスに費やされているのを垣間見ました。

一方で、今の組織ではこうした会話を聞いたことは一切ありません。なぜなら、ものの考え方は組織の土台であり、共有されるべきものであるから、という一種の共通理解があるからです。そして、個人の理解がずれることを前提にするからこそ、誰しもが使いやすいツールを議論しながら開発することに時間が割かれます。また今日は初めて戦略会議に出させてもらいましたが、戦略を考える上で重要な質問は何か、ということを議論しました。これはとても欧米的で、いくつかの重要なフレームワークの中で、良い質問、アジェンダを立てることに時間が費やされる。

私は日系企業で働いてみて、組織やマネージメントのやり方に一種の限界を感じました。第二次世界大戦の日本軍の組織的失敗を分析した名著「失敗の本質」にもありますが、未だに日本企業は非常に属人的で、上司が変われば仕事のやり方や質が変わる状況にも疑問を持ち、だから欧米の組織で戦略作りを学びたいと思い、大学院後の就職先も視野に入れて私は西海岸に渡りました。

今の組織は、最初に書いた、「考え方を聞かせてくれ」のような会議は一切なく、ほとんどの会議が30分以内で終わります。細かい点を確認することも少なく、大枠でディレクションが合っているか、ということを確認するのみです。もし欧米の大学院を検討されているのであれば、ぜひ欧米の組織でインターンをして、マネージメントを学んでみることをお勧めします。

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先日の人権とビジネスのイベントにて