曲がり角の向こう

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD) 公共政策大学院の日々

日本、マニラ、都市と自然災害

先週から日本の洪水被害のニュースを追っていますが、深刻な被害が出ていて胸が痛くなりますね。昨日までそこにあった日常が、一瞬で消えてなくなるという不条理に打ちひしがれる方々の声をニュースで読むと何とも言えない気持ちになります。

実家の兵庫県も大規模な被害とは言わないまでも洪水の危険度が上がっていたので心配していました。特に実家に帰省中の姉の出産予定日が迫っていたこともあり、病院への運転にも支障をきたしているのではと思っていました。無事に姉は先週の今日に出産を迎えることが出来ましたが、母曰く1日出産日がずれていると大雨の中で病院へ向かうのは危険があったとのことでした。

ところで私は先週マニラにある国連機関が新たにオフィスをオープンするということで、記念イベントに友達のツテで招待いただき、シェルター支援や行政の都市開発を専門としているUN-Habitatの所長Mr.Crisと話す機会がありました。

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彼曰はく、マニラの都市計画を担う行政官の建設アセスメントの能力が限られていて、ガイドラインも十分に整備されていない為に、何でもかんでも建物を建ててOKということになっているとのこと。そこでUN-Habitatはガイドラインの整備と行政官のキャパビルを行っているとのことでした。特に建設の計画と実施にはどうしてもギャップが生まれるが、そこを上手く調整できる人材が少ないとのこと。話を聞いて、このマニラの異様なショッピングモールの多さ、例えば私の住んでいる周りには徒歩圏内に4つもモールがある、や深刻な交通渋滞はこの辺から生まれているのではと思いました。

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マカティにあるアラヤセンターの景観。シンガポールを彷彿とさせます。

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川の近くにも住む低収入の人々。川が氾濫したら真っ先に被害に遭うでしょう。

少し話は脱線しますが、現フィリピン大統領のドゥテルテ大統領は、新中国路線をとっていて、かなりの中国からの投資が入ってきています。興味深いことに、南シナ海の領土問題についても、中国の主張は法的に認められないとしてフィリピン側の主張を認めたハーグ裁判の判決を当時のアキノ大統領は歓迎したものの、ドゥテルテ大統領は判決を棚上げして、むしろ中国との協力体制に力を入れています。

しかしながら、日本の今回の深刻な洪水被害を前に、東南アジア諸国も明日のわが身として冷静に自然災害のリスクマネージメントに力を入れるべきだろうと思います。そういう意味で、投資マネーに沸くマニラでは、今一度、安全性や自然災害に強い街作りのために厳しい建設基準を設けていくことが必要ではないかと思います。私自身建築には興味があるものの、都市計画(Urban Planning)は素人なので、今回の日本の洪水災害とマニラの都市計画の話を聞いて来期以降でUrban Planning の授業を取ってみようかなと思ったのでした。