曲がり角の向こう

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD) 公共政策大学院の日々

パリ、色鮮やかな旅

2012年の5月、私は人生で初めてパリに行った。しかも1人で。当時付き合っていた彼に「どうしても一人でパリに行きたい」と駄々をこね、二人の間に不穏な空気が漂う中、私はパリのシャルルドゴール空港へ飛んだ。

大学生の時に好きになったフランス映画に出てくる女優がとても魅力的で、単純にフランス人女性の生き方を見たいと言うのがきっかけだったけど、もっと深い所で、自分の何か大事なものを取り戻したいと思っていたのかもしれない。だからその旅に、自分以外の視点が重なるのを避けたかったのかもしれない。

今思い返してもパリで過ごした1週間弱の時間はあまりに色鮮やかで、美して、切なくて、そっと引き出しにしまった宝石箱のような存在として私の中にある。例えば、最も尊敬する写真家アンリ・カルティエブレッソンの写真美術館で出会った画家ジャン・コルトー氏との会話とか。「I am an artist」「 How about you?」と澄んだ瞳に見つめられて私は一体自分が何者なのか答えられなかった私に「出会った」。仕事も、彼との関係も、何かがズレていて、そして自分の人生が自分自身とかけ離れていっていて、私はそこから離れないと自分を見失うと思った。でもジャン氏との清々しい出会いで私の心は洗われ、私は私らしく生きようとその時に思えたのだった。それから1年後、私は当時の仕事とも、当時の彼ともさよならした(というかフラれた)。

パリジャンの、嬉しいときには喜び、悲しいときには悲しみを表現する。愛する人や友人に花を贈る、キスをする、ハグをする、そんな生き方が、私の人生に今でも影響を及ぼしている。だから、私の次の進路が決まったら、また一人でパリに行こうと思う。

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モンマルトルの丘。私はここで最終日に旅の為に買った一眼レフを無くす。色々あったがすべてが色鮮やかな日々だった。